つぶやきば@はてなブログ(跡地)

こちらのURLに移転いたしました。http://ushigen.hatenadiary.jp/

石田雄太『屈辱と歓喜と真実と』(ぴあ)

WBCワールド・ベースボール・クラシック)日本代表の舞台裏を書いたノンフィクションです。2007年度のミズノスポーツライター賞の有力候補、と大見得を切っておきましょう。
この本のテーマは「王ジャパンに存在した溝」です。「レギュラーと控え」「若手とベテラン」といった対立構造はどのスポーツでも共通のものでしょう。「イチローという存在に対する各選手の対応」というのは、中田英寿のいたサッカー日本代表においても存在した「不安要素」かもしれません(軽くネタバレしますと、井口・荒木の「代役の代役」として名を連ねたアテネ五輪代表キャプテン・宮本慎也のサポート、そして子供の頃からイチローを憧れの存在として見ていた今江・川崎・青木といった若い選手達のおかげで、あまり深刻な対立を生み出しません)。様々な溝を埋めるべく話し合い、行動してチームをひとつにしていこうと画策していく姿が描かれていますが、最後の最後まで埋まらなかった「溝」として「日の丸に対するスタンスの違い」を取り上げます。この点はサッカーと同じ意味での「日本代表」が存在しなかったからそこ生じる、日本プロ野球特有の「溝」だと言えるでしょう。あとがきにおいて筆者は「野球における日本代表は何のために存在しているのか」と問題提起をしています。五輪で野球は消えますが、WBCが続く限り「野球における日本代表の意義」は問われ続けることでしょう。
野球好きは必読。スポーツノンフィクションが好きな方も必読。『敗因と』を読んででガッカリした人には特に読んでいただきたい一冊だと個人的には思います。